2016年11月2日、日本国産として初めてのスペシャルティコーヒーが沖縄県国頭村安田から誕生しました。高い緯度、低い標高に加え、沖縄の厳しい環境では不可能と言われ続けた高品質生豆の生産。ついにその品質と安田(あだ)らしさを世界に認めてもらうことができました。
下に審査機関 CQI(Coffee Quality Institute)の正式なスコアを添付しています。
生産国(Country of Origin)に初めて「Japan」が表記された証明書です。Grade Infomation のBaselineが基準点で、Sampleが安田珈琲のスコア。合計84.67で「Speciality Grade」と認定されました。
スペシャルティを目指した理由
本音をポロリと言わせていただくと、農産物に対して甲乙をつけたり、点数をつけたり、というのはあまり好きではありません。でも、ここ沖縄でも高品質な美味しいコーヒーが生産できることを証明したかったというのがひとつ。「一度飲んだからもういい」ではなく、毎年楽しみにしてもらえるようなコーヒーを生産したかった、そしてそれを知ってもらうには客観的な評価をいただく必要がありました。
不可能と言われた時代
沖縄で生産されるコーヒーは、その過酷な生産環境から、高品質なコーヒー豆が生産できる場所ではないと長年言われ続けていました。低い標高、夏の暑さ、冬の寒さ、台風などなど、環境が厳しいことは事実ですが、品質の高い美味しいコーヒーができないと言われるのには、ずっと疑問を持っていました。
撃沈
初めてコーヒーを収穫した年に、コーヒー業界の重鎮たちにアダコーヒーをカッピングや試飲していただく機会をいただきました。どなたの評価もほぼ一致、まぁまぁな評価でしたがスペシャルティグレードには届きませんでした。いろいろとあたたかいアドバイスをいただく中、悔しい思いも。それは「海外のいい豆が並んでたらあえて買いたいと思う豆ではない、品質ではなく希少性で売ったらいい」というお言葉でした。もちろん冷静なアドバイスをいただいて大変ありがたかったのですが、悔しさと同時に自分たちの土地に申し訳ないという感情がありました。
原因を探る
コーヒーは農産物、ならば評価が低かったのは自分たちの勉強不足や技術不足。この地で育つコーヒーの良さを引き出すために、栽培から精製まで、すべての工程を1つ1つ見直して、マイナス要素を減らしていくことから始めました。自然が育ててくれたものは100点と考えると、そこから人間のやることの中でいかにマイナス要素を少なくしていくかということを考えました。なので、ぼくたちはいまだに特別な技術を持ってなく、1つ1つ当たり前のことを当たり前に丁寧に、その積み重ねでしかありません。
沖縄産スペシャルティコーヒー誕生
栽培に関しても精製に関しても自分たちのやり方がなんとなく定まってきた2016年、国際審査機関であるCQIに沖縄県産のコーヒーとして、審査してもらう機会をいただきました。結果はスコア84.67のスペシャルティグレード、ついに沖縄から、日本から、スペシャルティコーヒーが誕生しました。沖縄はコーヒーにとって厳しい環境であることは事実ですが、それでも美味しい高品質なコーヒーが作れることを証明することができました。
不可能と言われたことが普通のことへ
スペシャルティコーヒーが沖縄でもできることを一度証明してしまえば、池に投げた小石のようにその波はどんどん広がっていきます。2022年、名護市の振慶名農園と久米島の2農園のコーヒーがスペシャリティーグレードの認証を受けました。これからも高品質な豆が増えて、沖縄各地のコーヒーを楽しんでいただける時代がやって来ると信じています。
さらなる挑戦
世の中には素晴らしいコーヒーがたくさんあります。その中でも、アダコーヒーが好きだ、今年も安田珈琲が飲みたい、と言っていただけるような唯一無二のコーヒーを目指して、立ち止まらずに挑戦を続けていきたいと思っています。